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チベット家具とシンボリズム

 
 チベット家具の装飾は、チベット密教を象徴するもの、鮮やかな花があしらわれたもの、そして、風景や物語にもとづく絵が組み合わさっています。いずれも、瞑想にイメージされるスピリチュアルなシンボルを伝えるためのものであったり、実際には全く花が存在しない現実の風景との対比をなすように、家具には美しい絵をあしらったりしています。

 チベット家具には、八吉祥文様、もしくは「タシタゲ」と呼ばれる大変重要なシンボルが見られます。
ほら貝 仏陀の教えにあるように、ほら貝は四方八方に音を届けます。教えの中では、ほら貝は仏教の教えを四方八方に大胆に届ける媒介の役目を果たしています。つまり、ほら貝は精神力や権威の象徴であり、また厄除けとも信じられています。

蓮は仏教において、重要なモチーフです。仏陀のイメージだけでなく、その他、仏教説話に登場する重要な登場人物は蓮の花の上に座している様子が頻繁に描かれています。蓮は、その根が泥の中を這い、水の中から茎を伸ばし、水面から伸び出でた後は、素晴らしい姿を見せてくれます。これは、まさしく魂の成長過程の例え話です。つまり蓮は、泥の中のドロドロの物質至上主義から、水上の悟りの境地に至るまでを象徴しています。

法輪 法輪は、3つの部分によって構成されています。まず、輪の中心が世界の中心を意味し、8つの車輪を支える柱は、悟りに至る8つの過程を意味しています。その8つの過程は、正しい理解、正しい態度、正しい語り、正しい行い、正しい努力、正しい注意、正しい瞑想で構成され、分かれることなく、ともに連携し合います。輪の縁はその極限を表しています。円の中に全てが存在しており、その円は、まるで仏陀の教えのように、完璧であり、完成されたものであるとされています。

傘による影は叡智を意味しています。また、傘にかけられた掛け布は慈悲の心を示しています。傘は、痛みをともなう苦しみと欲の熱から護る役目を象徴したものです。ところによっては、8面の傘も見られますが、これは悟りに至る8つの道に関連したものです。

エンドレス・ノット
(終わりのない結び目)
始まりもなく、終わりもないこの結び目が示しているのは、仏陀の無限の叡智です。また、すべての出来事や行いは、原因とその作用が互いにつながりあっていることも示しています。

2匹の金魚 水中では完全に自由であることから、魚は幸せ、子孫繁栄、そして豊かさを象徴しています。また、精神のレベルにおいては、この2匹の魚は、全てを奪われようが、決して衰えない仏陀の力に満ちあふれていることを示しています。

勝利の旗 仏陀の悟りを意味する初期の仏教的なモチーフで、無知を超えた知識の勝利を意味しています。また、この旗は仏陀が誘惑を乗り越えた勝利を想起させるためにも用いられていました。

これらの8つの文様に加えて、チベット家具にはさまざまな絵が描かれています。よく見かける文様のうち数点を以下に掲げました。いずれも時代を超えて、頻繁に描かれてきたもので、現実にも、また伝説にのみ登場する動物なども選んでみました。

宝石鉢 多くの文化でみられることですが、「尽きることのない器」が繰り返し登場しています。精神的には、この宝石鉢は仏陀の尽きることのない心を象徴しています。

スノーライオン スノーライオンはチベットの国章です。白いスノーライオンは茶色か碧青色の鬣を持ち、五行(木・火・土・金・水)でいう「土」、恐れを知らない心、そして勝利を表しています。

欧州における凶暴なイメージと異なり、チベットにおける龍は、偉大なる想像力から生まれたもの、とされています。思いのままに自分の大きさを変えることができるといわれており、一度に空を覆ってしまうことが出来ると思えば、姿を消すことも出来るといわれています。また、春分の日に空に舞い上がり、秋分の日まで空にとどまります。また、秋に深い池に潜りこむと、冬は泥の中で過ごします。このように、龍は天国と春のパワーを示しています。龍に付随して描かれるのは、燃えさかる珍しい真珠玉です。つがいの龍が激しく戦う絵や空中を追いかけ合う絵がよく見られます。

ガルーダ
(怪鳥、チベットでは
キューン)
ナガと呼ばれる神聖な蛇や、いわゆる蛇の宿敵といわれており、五行では「火」を、そして空の神を表しています。カギ爪やくちばしの間に蛇をつかんだ姿で描かれています。

トラ 中国でもチベットでも、医薬分野では、トラのあらゆる部分は強力な薬効成分があるといわれています。トラは力と恐れを知らない心、そして軍事力を象徴しています。トラ皮は、よく敷き皮や軍服として使われていました。チベット仏教では、トラはあらゆる神、特に好戦的な性格を持つ神を乗せています。トラにまたがるということは、その神が恐れを知らないことをあらわしています。

白象 白象は心の強さを象徴しています。心の強さとは、悟りに至るまでに得られる心の静けさや平穏をあらわすものであり、特に仏陀の無限の力を具現化するものだといわれています。

鹿 通常、つがいで描かれています。鹿は、サルナート(インド)の広大な鹿の大庭園で仏陀が行なった初めての説教を現しています。鹿は、仏教のシンボルである8つの柱をもつ金輪とともに描かれることが多いモチーフで、金輪の両脇で、穏やかに休んでいる姿が描かれます。鹿のリラックスした様子は、仏教における瞑想のよさを表現しています。

マングース ナガと呼ばれる神聖な蛇と、いわゆる蛇(どちらも宝の守護者)の宿敵として、マングースは通常、鮮やかな宝石を吐き出している姿が描かれています。マングースはおそらく、中央アジアで使われていたマングースの皮で作られた財布に由来するものだと思われます。

ガルーダライオン ガルーダライオンは、調和から生まれた3匹の勝利の象徴の一つです。空を支配するガルーダ(怪鳥)、そして、この土を支配するガルーダライオンは、天国と地が、勝利によって一体となることを現しています。

キルティムカ、
もしくはチベットに
おけるジーバッグ
このグロテスクな姿は、通常、祭壇の最上段の扉に描かれています。この生き物は強欲の獣であり、無節操なことに対して、警告を与える役目を持っています。頭と手だけが描かれているのは、餓鬼がその二つが残るまで、すべて食べ尽くしてしまった果ての姿を描いたものであり、口にはクツワをはめられ、角の生えた顔で描かれています。
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